朝日新聞の報道によると、民間銀行の多くが年収の3分の1を超える個人融資を行っているという。

 年収を超える貸し付けを行っている銀行もあり、背景としてお金を貸す側、借りる側ともに苦しい状況が見えてくる。

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 統計局のデータによると、銀行による個人向け貸し付けの金額は年々増えている。

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 「住宅向け貸し付け」と「消費財・サービス購入貸し付け」をグラフ化したものだが、「住宅向け貸し付け」は年々増えているし、「消費財・サービス購入貸し付け」もバブル以降下がっていたものの、2000年代に入ってから増加傾向にあることがわかる。

 

国税庁のデータによると、平均年収は1997(平成9)467万円だったが、年々下がっており、2009(平成21)406万円となり、2016(平成28)では420万円となっている。

 よほどの資産家でもなければ、一般的にはマンションにしろ、一軒家にしろ銀行から融資を受けないと、手にすることはできず、賃貸物件以外なら融資を受けることになる。

 

 このデータだけをみると、銀行の笑いが止まらないように見えるが、最近はそうでもない。

というのも金融ビッグバンが起きてからしばらくたち、さらに低金利政策が始まったことにより、銀行の金利が低下しているからだ。

 

 1996年から始まった金融ビッグバンにより銀行業への参入が相次ぎ、イオンやセブンイレブンなどが金融業界に参入してきた。

 最近ではヤマダ電機が住宅ローンを開始したこともニュースになり、いわゆる金貸し商売は飽和状態に近づいている。

 

 さらに1998年にはバブル崩壊の失われた数十年の経済不況のさなか、金融政策の緩和が求められ、ゼロに近い無担保コール翌日物を設定したことから「ゼロ金利政策」と呼ばれるようになった。

 

 無担保コール翌日物とは金融機関同士が1営業日において資金のやりとりをしたときに発生する金利のことで、1995年には2%であったものが、1999年には0.15%になり、2008年には0.1%、2010年には0.0-0.1%となり、日本銀行の黒田総裁による日銀当座預金の一部がマイナス金利となる「マイナス金利」により、現在はマイナスとなっている。

 

相次ぐ金融業界への参入による飽和状態と、金利水準の低下により、現在は借りる側が圧倒的に優位な立場になり、格安の金利でお金を借りることができる状態になっている。

 

 個人に限らず、企業融資に関しても余程危ない企業でなければ引く手あまたの状態になっていて、都市銀行、地方銀行、政府系金融機関、生命保険会社などが融資競争を繰り広げている。

 

 そのため、低金利によって銀行としては入ってくる金額が減り、個人向けに融資に関しても量で補うことを余儀なくされているのが分かる。

 

つまりそれは、貸す対象を増やすことであり、上記のニュースにある通り、年収の3分の1以上の融資や、年収以上の融資を行っていることにつながっている。

 

そうなると当然、審査が甘くなったりして、貸す対象の質の低下を招く恐れがあり、貸しすぎや、返済能力などの問題が出てくることになる。

 アメリカ発のリーマンショックは、低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムの金利上昇によって引き起こされたが、変動金利で住宅ローンを借りている人の割合が多ければ、似たように返済不能になり、不良債権化することも考えられる。

 

 金利は下がったものの、自分たちの人件費などは変わらないため、利益を上げるためには量でカバーするか、企業マッチング事業など、金貸し以外に力を入れなければなくなってきている状況にあり、銀行は苦悩の時代を迎えている。

 今後は、人員削減や銀行統合、銀行法の改正などのニュースが出てきても不思議ではない。